バレンタインの起源とチョコレート
2月の大きなイベントといえば、バレンタインデーですね。
節分ですか、それも確かにそうですね。
ただ、まあ、今回はバレンタインデーのおはなしです。
バレンタインデーの起源には諸説ありますが、古代ローマの多産と豊穣のお祝い「ルペルカリア」が起源と言われています。
「ルペルカリア」は、現代ではなかなか受け入れがたい風習です。
まず、男性が若い女性に会う前に生殖能力を高めるため、羊や犬を生贄にします。
そして服を脱ぎ、生贄の動物の皮で体を覆います。
…何がしたいのか全くピンときません。
「もう2月かあ、生贄の皮かぶるの楽しみだなあ」なんて言ってる人とは関わりたくないですね。
ところが当時はこれが人気の風習で、ローマ帝国がキリスト教化してもなお、150年も続いていたようです。
スペインのプラド美術館に、ルペルカリアの絵が展示されています。
しかし5世紀ごろになってから、風紀を乱しているということで、代わりにバレンタインデーを祝うようになりました。
ちなみに「ルペルカリア」は2月15日、「バレンタイン」は2月14日です。
そして時は移ろい、日本でのバレンタインデーは、チョコレートをプレゼントするイベントとなっています。
あらゆる店で多種多様のチョコレートが販売され、チョコレート好きにはたまらない期間でしょう。
気温も低くて溶けにくいので、チョコレートを買うにはうってつけですね。
チョコレートといえば、パリでは毎年10月末から11月始めに「Salon du Chocola(サロンデュショコラ)」が開催されています。
1995年から30年近く続くイベントで、世界中からチョコレート、またはカカオ商品が並びます。
チョコレートでできたドレスの展示や、大きなチョコレートの像の展示もあります。
これはパリでも人気のイベントで、大人一人16€(2500円)くらいしますが、入場に美術館並みの行列ができます。
現在は、パリに限らず世界中で形を変えて開催されています。
日本でも公式イベントが新宿伊勢丹で開催されています。
「また東京かよ、遠いなあ。」と思いましたか。パリよりは近いですよ。
さて、これはチョコレートブログではないので、そろそろシードルのはなしに切り替えましょう。
「シードル」と言いましたが、今回の主役は「カルヴァドス」です。
カルヴァドスってなに?
「カルヴァドス」とはシードルを蒸留して作った、リンゴ由来のブランデーです。
「アップルブランデー」とも呼ばれますが、「アップルブランデー」と「カルヴァドス」は正確には異なります。
「カルヴァドス」はノルマンディー地方で作られ、シードルを蒸留し2年以上オーク樽で熟成したものだけがその名を名乗れます。
つまり、フランスの他の地域でも、もちろん日本でも絶対に作ることができません。
どんなに美味しく作れたとしても、ノルマンディー以外の地域では「アップルブランデー」ということになります。
泣いても喚いても日本では作れません。無理なものは無理なので、諦めてください。
そしてこの「地域や作り方を限定するルール」は「AOC」と呼ばれます。
有名なところでは、「シャンパン」もAOCです。
シャンパーニュ地方で作られたスパークリングワインだけが「シャンパン」を名乗れます。
「コニャック」もそうですね。
AOCはアルコール飲料に限らず、チーズなどにも適応されます。
そもそもなぜカルヴァドスのはなしをしているかというと、カルヴァドスがチョコレートに合うからです。
カルヴァドスがチョコレートに合うという話は、以前もイースターの回に記事にしています。
ブランデーと言えばチョコレートですよね。
そしてカルヴァドスはAOCブランデーのため、他のAOCブランデー同様にランク付けがあります。
AOCブランデーのランク付けにはこのようなものがあります。
- Trois étoiles (2年)
- V.S. (2年)
- V.S.O.P.(4年)
- Napoléon (6年)
- X.O. (6年)
横の年数は何かというと、樽で熟成する最低年数です。
一般に、どのブランデーも熟成年数が長ければ長いほど値段は上がっていきます。
中には、1000万円以上するブランデーもあります!
![シードル太郎](https://oicidre.com/wp-content/themes/cocoon-master/images/man.png)
もはや飲むためのものじゃないね。
ただ、カルヴァドスに限ってはそこまで高いものはなく、それなりに高級なものでも10万円以内で買えます。
なんだか安いみたいに言いましたが、10万円はやっぱり高いですね。
これではあまりにもハードルが高すぎます。
というわけで、今回は3000円以内で買えるカルヴァドスをご紹介するのでご安心ください。
![シードル太郎](https://oicidre.com/wp-content/themes/cocoon-master/images/man.png)
よかったあああ!
カルヴァドス飲み比べとチョコレートのペアリング
さて今回紹介するのは「Boulard(ブラー)」と「Busnel(ビュネル)」のカルヴァドスです。
世界三大ブランデーとも言われるカルヴァドスですが、こちらは比較的手頃なカルヴァドスです。
Boulard Grand Solage Calvados Pays D’Auge
![](https://oicidre.com/wp-content/uploads/2024/02/c2d34df85d952c96c293f9898da44605-1024x768.jpg)
Boulard Grand Solage Calvados Pays D’Auge(ブラー グラン ソラージュ カルヴァドス ペイドージュ)
…長い名前ですね。
説明すると「Boulard(ブラー)」はメーカーの名前です。
「Grand Solage(グラン ソラージュ)」は「偉大な土壌」という意味で、これが商品の名前です。
「Calvados Pays D’Auge(カルヴァドス ペイドージュ)」は「ペイドージュで作られたカルヴァドス」を意味します。
この「Pays D’Auge」も先述したAOCです。
ノルマンディーの中でも、ペイドージュ地方で作られたものに限られ、リンゴの品種やブレンドする割合もある程度決められています。
また、蒸留も単式蒸留器で2回蒸留することが条件で、オーク樽で2年間の熟成が必要です。
これらの条件を満たさなければ、「Pays D’Auge」を名乗ることはできません。
Grand Solageは、リンゴのフルーティな香りが豊かなカルヴァドスです。
そしてメーカーである「Boulard」は、1825年に創業した老舗中の老舗です。
1825年と言えば、日本ではまだ江戸時代ですね。
2回蒸留する方法の先駆者で、AOCへの運動も行い、その登録に貢献しました。
BUSNEL Calvados Pays d’Auge
![](https://oicidre.com/wp-content/uploads/2024/02/26709763222995d6b2b0afc510a757c5-1024x768.jpg)
BUSNEL Calvados Pays d’Auge(ビュネル カルヴァドス ペイドージュ)
こちらはさっきより短い名前で安心したでしょうか。
それにほとんど説明した内容なので何となくわかりますね。
「BUSNEL」はメーカーの名前です。
そして「Calvados Pays d’Auge」はもうご存じ、ペイドージュのカルヴァドスです。
名前が短いからと侮るなかれ。
なんと「BUSNEL」の創業は1820年。
現存する主要なカルヴァドスメーカーの中では最古です。
BUSNEL Calvados Pays d’Augeは香りがパッとして花のようで、飲み口はスッとドライです。
喉を通したあとの鼻から出ていく息は、きれいなリンゴの香りがします。
6パターン飲み比べ
ところで、カルヴァドスはブランデーなので、アルコール度数が40度あります。
ストレートではちょっとアルコールが強すぎるかもしれません。
そこでこの2種類のカルヴァドスを、ロック、炭酸割り、リンゴジュース割りで飲み比べたいと思います。
さらにそれぞれとチョコレートとの組み合わせも試します。
ちなみに今回この飲み比べのパートナーとなるチョコレートはこちらです。
![](https://oicidre.com/wp-content/uploads/2024/02/4955439e99ff716028ee84d09666c10c-1024x768.jpg)
よく見るティラミスチョコレートです。
いろいろな会社から売られていますが、これは銀座の「岡田かめや」で買いました。
パッケージが非常にシンプルですね。
詳細はわかりませんが、こちらが元祖のようです。
中のアーモンドがカリッとして美味しいですよね。
さあて、まずはロックで飲んでみます。
【Boulard】…リンゴの香りを口中で感じます。チョコレートでアルコール感をより感じます。
【Busnel】…華やかさが増します。チョコレートのマスカルポーネの味を際立たせます。
続いてソーダ割りです。
【Boulard】…良くも悪くもリンゴ味のハイボールです。アーモンドとより結びつきます。
【Busnel】…ドライなスキっとした感じが強くなります。チョコレートを軽くさせます。
最後はリンゴジュース割りです。
カルヴァドスをリンゴジュースで割ったものは「Pommeau(ポモー)」と呼ばれます。
「Pommeau de Normandie(ポモー ド ノルマンディー)」もまたAOCのため、その割合や産地に条件があります。
そのため「カルヴァドスをリンゴジュースで割ったもの」は本当のポモーとは呼べません。
さらに今回は青森県産のストレートリンゴジュースを使用しています。
というわけで、シンプルに「リンゴジュース割り」とします。
【Boulard】…リンゴの良さを両方から感じます。チョコレートが最も甘くなります。
【Busnel】…ザラッとしたリンゴの甘さをきゅっと締めます。リンゴとチョコレートの甘さが調和します。
それぞれ、味はもちろん、チョコレートと感じ方も全く変わってくるのでこの飲み比べは楽しいです。
オススメは断トツで「リンゴジュース割り」です。
次はロックで、炭酸割りも悪くはないですが、それならシードルを飲んだ方が筋が良いでしょう。
どちらも3000円以内で買えるので、気軽に試せるのもありがたいですね。
ビュネル フィーヌ 40度 700ml【5,000円以上送料無料】
というわけで、今回の六杯でした。
シードルと違ってアルコール度数が高いので、飲みすぎにはお気をつけください。
蒸留して、上流となる。
シードル太郎